サイード・ゴネイム
エジプト軍退役少将
世界安全保障・国防問題研究所(IGSDA)会長

元のソース:http://ssdpaki.la.coocan.jp/topics/20.html?fbclid=IwAR3GAgYdRsWPYhTo4Z1OGa0aj93z_AFbQRBU1VLtNwNB1M7SJej-AAXQc58

はじめに

1991年のソ連の崩壊から2011年のいわゆるアラブの春の始まりまでの間、中東の地域パワーのダイナミクスは比較的安定していた。米国は単独かつ支配的な国際パワーだった。現在は、動乱、革命、内戦、米国の戦争疲れおよび戻ってきた主要パワー拮抗のコンビネーションが、劇的に中東の地政学を形作っている

米国とロシアは中東の地域的問題の解決を図ろうと努めている。他方で、中国は現時点では中東の地域問題に関して主要なプレーヤーではないものの、米国・イランの危機以降特に、中東における強いプレーヤーとして登場してきたように見える。そして、地域全体に濃い経済的外交的関係を構築して、将来、より大きな影響力を持とうと準備している。

欧州連合(EU)のこの地域での役割は相対的に下がってきた。EUの関心は、中東と北アフリカの一部における、不法移民、テロ、国境を越えた犯罪といった紛争のリスクの防止に移っていった。いくつかのEU諸国、特に英国とフランスは近い将来、より大きな役割を課すことを求めている。

また、このほか6つのプレーヤーが考慮されなければならない:2つの地域パワー、イランとトルコ、そして中東その他の地域問題解決策形成に強く寄与しようとする4つの国がある。この4つの中で、イスラエルは小さい国だが大きな国力を持ち、また米国のサポートを半永久的に受けている。そこで、イスラエルは地域パワーとも考えられている。それから、資源と財政力を基盤とする3つの豊かなアラビア国家、すなわち、ミドルパワーたるサウジアラビア王国、小国のアラブ首長国連合(UAE)、そして超小国のカタール。これらの国は地域パワーではないが、中東、アフリカその他の地域に大きな利害関係があるため、地域秩序を形成しようとしている。彼らのライバルは、いくつかの地域に広がっている。例えば、アフリカの角、北アフリカ、サヘルとサハラ、中央アジアそしてバルカンなど。

エジプトは、リビアとパレスチナに特別な役割を持っているほか、アフリカにいくつか役割がある。

以上全ては地域がさらに不安定になることを予見しているが、その理由は不均衡なパワーを使うアクターの間の複雑な対立の結果、影響力の管理が今欠如しているからである。

概観

  • 新しい安全保障ダイナミクスに入る中東の戦略的ライバリー
  • 東アジアへのインパクト
  • 結語と将来展望

中東における対立

大国の対立

Ⅰ 米国(アメリカ・ファースト)

トランプ戦略2017

4つの死活的国家利益(戦略的4本柱として構成された)がこのコミットメントの背骨を形成する。

  • 米国本土、米国民、米国生活様式を守る
  • 米国の繁栄を推進する
  • 力により平和を守る
  • 米国の影響力を高める

このNSS(国家安全保障戦略)およびその4つのテーマはリアリズムの原則により導かれる。

米国の戦略目標について個人的見解

利益と支配;米国を最も強い影響力のある国であり続けることにより確保

以下を通じて

  • エネルギー安全保障
    • 米国およびその同盟国のため中東のエネルギー資源を確保
    • 米ドルでのみ石油販売できる有利性
    • これら二つは、米国に、OPECメンバーのロシアと非OPECメンバーの中国という主要なライバルを前にして、エネルギーと先進国を概ね管理する能力を与える
  • イスラエルをフルサポート
  • テロとの戦い
  • 競争者との対峙

ロシアは、特にプーチンが政権についた以降旧ソ連邦の相応しい後継者として米国の競争者に戻ってきた。米国はロシアが大国に戻ることを阻止し、地理的領域の中にロシアを包み込むよう試みてきた。しかし、この試みはほとんど期待した通りの結果をもたらさなかった。そして今、ロシアは、この軸における米国の失敗を利用して新しい地歩を日ごとに獲得し続けて行き、地中海に面した最も重要な関係国(シリア)においてロシアの中東におけるプレゼンスを強化した。

中国は巨大な経済大国となった。これに対し、米国は、知的財産権保護を理由に中国に対し貿易戦争を宣言した。ちょうどこの時中国は、強い軍事力で守られた政治的影響力を持ち繁栄する経済的影響力のある国になることを目標とした正確かつ段階的なタイムプランに基づき、ゆっくりと着実に世界に近づいていた。最近ジブチに軍事基地を保持することになった中国は対抗可能な大国になることを目指しており、米国から世界で最大のパワーを保持する唯一の大国の地位を奪おうとしている。

米国がロシアと中国の関係の近い将来を注意深く観察しているのは間違いない。この二つの東側の大国は、特に利用可能なビジネス機会に関し将来を見据えている。国際関係においてロシアと中国が和解したとはいえ、米国は、シリア内戦時の二つの大国の協力関係が両国間の抗争の基になる経済的なライバル関係を導くと予見すると思う。

欧州連合(EU)は米国の主要な同盟国であるが、同時にまた経済的観点から見ると主要なライバル同士でもある。米国は英国のEU離脱を、大きなアングロパワー構築のため支持している。これは同時に、EUの強さを弱める働きをする。EUは共通の外交戦略を欠いており、経済は主として外国貿易に依存している。安全保障は主として、米国のNATOへの貢献に基礎をおいている。EUの防衛は自立していない。

米国とEUの間にはイランについての政治的な不和がある。EUの3国(E3)は共同包括行動計画(JCPOA)に署名している。うち2国は国連安全保障理事会の常任理事国である。フランスとドイツは常に米国のイメージに縛られないよう努めてきた。

欧州は、米国は利己を目的とするあるいは無謀の政策を採用していると考える。イランに対する米国の制裁が欧州の利益を侵害しているほか、彼らは米国とイランの対立激化が中東の安全保障リスクを深刻化させていると考える。

このようにEUと米国は、イランの情勢に関して共通の基盤を持っていない。

トルコにおいてエルドアン大統領は、両国で多く得るものが多かった米国・トルコ関係を含め、地域的あるいは国際的関係を大きく損ねてしまった。トルコと米国双方に、両国の関係悪化の責任がある。

米国・トルコ関係の緊張を高めた大きな原因はシリアにある。米国は、シリアにおいてテロ組織であるISISと戦う、テロリストと分類されているクルドに対して武装化を進めてきた。この緊張はイスラエルがクルド国家創設をサポートするのに伴い高まってきた。そして、クルドに対するトルコの軍事行動が始まった。その内、トルコ軍はシリア国内に30キロも深く侵入する。トランプ大統領が2018年末までに米軍をシリア国外に移動させることを決定すると、トルコ・米国間の緊張がエスカレートしていった。そのような錯綜は止まらない。さらに、トルコが第5世代の米国戦闘機を邀撃できるロシア製S-400対空ミサイルの購入を発表したため、緊張の高まりは続いた。

最近、攻撃的な政策を取ろうとするエルドアンのやり方に関して米欧では不満が大きくなっているようだ。また、難民問題に関するエルドアンの欧州に対する強硬姿勢も目立つ。最も重要なことは、彼のオットマン帝国を願望するような新しいやり方に制限がないことである。米国・トルコ関係はいよいよ悪くなり緊迫していくと思う。

2019年12月の初め、米国議会は半世紀以上において初めてアルメニア虐殺の非難決議を行った。これはアンカラに対する政治的圧力と考えられる。後で上院の外交委員会は、トルコがF-35戦闘機を購入することを阻止する法律を提案した。他方で、トルコが長年領土紛争を続けているキプロスに対しては、米国の武器購入を認めようとしている。

このようなスタンスは議会のコンセンサスを反映している。それは、NATOを通じてトルコにリンクしていた米国は新しい政治軍事計画をうまく立案するだろうというものである。前米国欧州軍副司令官のヲード大将は、米国はトルコにあるインサーリック空軍基地を信頼できる他の同盟国に再配置すべきだと述べた。それは、トルコが米国から離れていること、また米国の敵であるロシアとイランに戦略的に傾斜していることが特に影響している。

以上のことは疑いなくロシアの利益とその長期的計画に流れ込んでいく。それは最近の環境下で米国との対立から得た新しいポイントである。

米国とイランの関係は、イランのイスラム法学者が権力を掌握して以来変わってきた。1979年以来継続して、米国政府、議会そして国防省は十数年間、中東に張られたイランの影響力のネットワークを打ち砕こうとイランを揺さぶることをやめなかった。欧州連合はしかし、このイランイスラム教体制が核兵器を所持するかもしれないことを懸念した。米国が、イランとの核合意で知られる共同計画行動(JCPOA)から脱退したことは、欧州の立場を揺るがした。欧州はこの核合意を支持し、シリア問題でイランを支持するロシアの立場を弱めて、テヘランをトランプ政権との新しい交渉のテーブルに引き出そうと考えていた。

数十年にわたり、米国とイスラエルの関係は進展している。米国は中東における最優先事項として、パレスチナにおけるユダヤ人の国家を守ってきた。このため米国は、地域におけるイスラエルの軍事力と外交的主権を固めるために軍事的援助を行ってきた。この目的は、イスラエルの隣人たるアラブとムスリムがイスラエルを受け入れることを仲介することである。イスラエルが唯一核を保有し地域では圧倒的な軍事優勢を持って地域軍事大国となるにつれ、米国の外交力は徐々に小さくなり下降していった。

米国の無制限なイスラエル支持とこの地域での軍事介入により、中東は米国に対するテロリズムの中心地となった。イスラエルがイランに対してその核開発を阻止するために宣戦を布告するも、多くの他の国は、イランを危険視したにもかかわらずいかなる先制攻撃も支持しない。米国がイスラエルを支持し地域へ軍事介入することにより、そこを世界に広がる反米テロの震源地としてしまう。イスラエルはイランの核開発を妨げようと戦争を仕掛ける脅しを続ける。地域の他の国々はイランを好きでないあるいは恐れさえしているが、イランイスラム共和国に対する先制攻撃には反対である。この間、我々の、地域の政府のテロ対策への協力は始まっている。それほどテロリストの数は大きい。ここでは米国を憎む人は9.11以前よりも大変多くなっている。以上のことは誤った米国の戦略から生じていると主張したい。

トランプ大統領はいろいろなやり方でイスラエルを支持し続けている。例えば、米国の大使館をエルサレムに移すこと、イスラエルがゴラン高原を併合することやその市民権をパレスチナの領域まで広げることを支持することなどである。

米国とエジプトの関係は、1970年代後半に米国の主導でエジプト・イスラエル平和条約が結ばれた後拡大し安定した。エジプトは、ソ連と結んだパートナーシップから米国とのより大きく重要なパートナーシップに切り替えた。米国・エジプト関係で最も不可欠な柱は、イスラエルとの恒久和平、中東における米国の戦略の支持そしてスエズ運河の航行の自由である。、このほか、米国のエジプトへの援助がある。最後の点は、しばしば緊張の原因ともなった。民主主義改革や人権についての米国のアプローチはうまくいかなかったが、米国の援助は年間13億ドルが維持された。

2009年のカイロにおけるオバマ大統領の演説は米国・エジプト対話の拡大に大きく寄与した。最初米国は、エジプトおよび地域の同盟国とパートナーシップ関係に入り、地域の政府及び人々が直面する問題に立ち向かおうと意図した。

2011年1月のアラブの春の後、ムバラクを継いだエジプト大統領モルシがムスリム同胞団と提携したことは国内外ではっきり見えた。その明確な提携により、モルシおよび彼のグループに対するエジプト軍の立場が強まった。エジプト人民と陸軍との永年の結びつきが、モルシとエジプト内のムスリム同胞団を覆したことに疑いの余地はない。

米国・エジプト関係が以前より良くなって、トランプとシシは、テロ対策、国境を超えた犯罪、内戦などについての地域の多くの課題に合意した。ただ、エジプトはロシアとの軍事提携も増やしてきた。最近のものは、新世代のスホイ戦闘機の購入取引である。

Ⅱ ロシア(国の回復、威厳の回復)

プーチンの2015年12月戦略の5つの柱

  • ロシアの非常に豊かな石油ガス及び先進技術
  • 巨大な軍事力と核戦力
  • 行動的な弾力的外交
  • ロシアのすべての敵を対象とした強力な宣伝組織の構築。RT(ロシア・トゥデイ 訳者註)は大きな心理的操作の道具であり、利害のある国々への計画的介入に道を開く
  • 反イスラム過激派、これは全世界においてすべての指導国に共通するものである

「ロシアの戦略的目標」

米国の政治・経済・軍事力を最大限見積もった上で、米国とイコールフットで果たせる役割を再開することを追求し、NATOを抑止し、結果として利害関係地域における米国の影響力を操れるようにする。

混沌に向かい合う戦略

プーチンは大統領の第一期目において、一方ではエジプトとトルコ(別々に)を通じ地中海経由で、他方でイスラエルとシリアを通じて、中東への影響力を拡大する確固とした計画を進めた。時同じくして、イスラエルはイスラエルの安全保障を確実にするためシリア内の東部深くに介入する戦略を立てていた。これは多くの分野でロシアとの関係を深める結果となった。他方で、エジプトが国家安全保障の観点からリビアに戦略的介入を図ろうとしていた時、プーチンは、トルコが南地中海に加えリビアに介入する戦略のため築いた戦略ブリッジを利用することを考えていた。しかし、ロシアの主要なターゲットは軍事安全保障的パートナーシップといった観点からみると、GCC諸国であった。

プーチンの戦略は、この地域への影響力を確保しようとする米国と競う(混乱させ利得する)ために立てられてきた。混沌とした場所は、プーチンにとって、米国のように組織化された方法で思考する人々に対して戦う場所としては最適である。米国や欧州では、プーチンはウィキリーク文書の背後にいる首謀者と見られている。

以上から考えると、プーチンは諜報組織を通じて予想外の手段を使用するだろう。米国や他の主要国が湾岸諸国と共有する西側の利益を多く含む長期的戦略を実行するには安定が必要だが、この安定を突き崩すため、ロシアは、地域の勢力と協力しロシアの情報機関を使って、イラクでアルカイダにかわりISISを持ち出したのではないかと疑われている。

地域における実行

プーチンは、シリアとイラクのテロ対策において低調な米国の動きによって得られた機会をうまくとらえた。プーチンはその状況を決定的に終わらせるためシリアに軍事的介入をすることを決断した。彼はシリアの大統領と取引きをし、テロを打ち負かしシリア政権を守るためとして、二つの軍事基地ーフメイミムとタルトゥスーを開いた。この動きはその西半球と湾岸諸国を困惑させたが、ロシアの介入はトルコとイランから大きな支持を得た。2015年末まで、プーチンは問題が彼の望んだ方向に収まっていくことを確信した。彼はイランとか中国のような反西側諸国と密かに同盟関係にある国を叩くことの代償を知ったかもしれない。しかし、最も重要な新しい同盟国は、西側の最大の同盟国の一つであるトルコである。

敵の失敗の悪用

米国は、シリアでISISと戦うクルドが大半を占めるシリア民主軍(SDF)を支援した。これはトルコにすれば、米国がテロリストとして追放した組織を支援するといったダブルスタンダードの態度と映った。トルコはこれを、イスラエルとサウジアラビアが支持する独立国家としてのクルディスタン独立につながる、クルドへの事実上の明確な支持と考えた。これに対してトルコは、シリア、イランおよびイラクに接しているクルド人口が大きな領土分割につながることを恐れた。クルディスタンの独立を推進するこの試みは、エルドアンが密かにロシア、イラン、シリアと外交的合意をしてトルコ軍をシリア領内に配備する機会を得させることとなり、結局シリアにおける米国のプレゼンス、計画、目標が揺るがせられた。

このロシアの敵対戦略に関し、イスラエル、シリアおよびエジプトは、中東地域と南の北アフリカおよび北のヨーロッパ諸国をリンクする地中海への鍵を握る国であることから、その存在感を大いに示すことができる。これら諸国は、南欧諸国に対する安全保障上の安全弁となると同時にEUおよび米国の地域への影響に対して脅威となる。

トルコは地中海を臨むとともに二つの国際海峡を所持している。ボスポラスとダーダネルス海峡だが、これらはロシアが黒海を通り地中海に出る最も重要な航路と考えられている。トルコはロシアの石油ガスをトルコ領土内を通るパイプラインを通じて欧州に輸送するといった最高かつ重要な所に位置している。これら全てが、明らかにプーチンのエルドアンの傲慢および無礼に対する忍耐の理由と考えられている。この無礼とは、2015年に起こったトルコ戦闘機によるシリアテロリスト掃討中のロシア機の撃墜、あるいはその後に起こったトルコ治安当局によるアンカラ駐在のロシア大使の暗殺などの後にあったものである。

Ⅲ 中国「対決よりも優越を」

「勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求め、敗兵は先ず戦いて而る後に勝を求む」

孫子の兵法より

中国の戦略目的

  • 経済力を強化し、周辺の海をコントロールできる地政学的な力を持つ
  • 国家及び統治体制に対する脅威を退け、国内の秩序および全てのチャレンジに立ち向かう潜在力を保持する
  • 中央アジア、中東、アフリカ、欧州および南米の主要なアクターと外交的経済的関係を拡大する

中国は米国が単極の支配勢力となることを望まないし、逆にこれに代わることも望まないが、世界的な経済大国になることを目指している。この目標を達成するために、中国は目標に比べて価値のない紛争への介入はどのようなものであってもしない。中国人はこの進み方に合った能力を示してきた。さらに、彼らは現段階で静かな経済管理に焦点をあて、不必要な大騒ぎを避け、彼らの経済的な敵を打ち負かすために動き、重要な経済的立ち位置を確保する。これは、巨額な貸し付け(債務の罠)あるいは天然資源や海上輸送港といった資源を確保するための直接買い付けにより、確保される。

このような考えに沿って、中国は一帯一路(BRI)を発展させている。これにより、インド太平洋、中東、アフリカ、欧州において外交力とソフトパワーを使って経済的プレゼンスを拡大している。BRIは、海港および空港への投資を行いつつ、中東及びアフリカ経由でアジアから欧州までの全地域の最も重要な国々と新しい強い関係を築くものである。

中国は現在および未来におけるいかなる場面でも軍事力を使用することは好まない。中国の戦略は、人々の受け入れをベースとし、軍事力の使用といった挑発に基づかず、経済力を使用したリーダーシップに基づいている。

米国の同盟国の孤立化

中国は、EUが米国と共有する利益を切り離すことを狙い、EUとの経済的外交的関係を拡大するための環境作りを現在強く進めている。中国は米国のミスを利用してEUに向かい、同様に日本や韓国にも接っしていく。中国がこのために使える要素は、EUが持つ米国の覇権に対する恐れとEUに大きな利害のあるJSPOAからの米国の脱退である。

中国は湾岸諸国、エジプトおよびアラビア海、紅海、地中海にカギを握る諸国との関係を深めている。中国は、経済、商業、文化の関係を気持ちよく進め、同時にパレスチナ問題やイラン・イスラエル・アラブの対立関係を近くで観察している。

一般的に湾岸の情勢に関しては、中国は米国・イラン危機を懸念している。しかし、中国は国連安全保障理事会における投票でイランを支持することにより、また、ミサイル分野に関する軍事技術の協力により、イランとの関係を維持している。湾岸地域はエネルギー資源を持ち、また、中国の一帯一路の重要な通路である。しかし、中国の本当の力は、将来、アフリカ、欧州、ラテンアメリカで見られるだろう。中国は、静かにゆっくりと、しかし着実に、関与をより深めるためまた力を蓄えるために活動している。

中東の人々は米国と中国をどのように認識しているか?

中東の人々は、中国や日本に代表されるアジアのプレゼンスは、米国や英国といった西側のカウンターパート(覇権と影響力)よりもベターであると信じている。なぜなら、西側のカウンターパートは物事の解決において軍事・政治力を優先し、目標達成のため経済的軍事的制裁で圧力をかけるからである。

これと全く違って、中国は、軍事力や政治経済の圧力をかけることをしないで、友好的な諸国に経済的潜在力を提供し、政治的関係を前進させる。

その結果、中国として嬉しいことに、中東の諸国が中国を経済的、政治的、軍事的に受け入れる。

中東の人々は、中国とのパートナーシップと同盟に魅力を持つとともに、中国が、他国の境界や内政に介入しないでパートナー国家の地域社会を粘り強く発展させていると見ている。

ロシアもまた、中東の人々には、協調的でベターだと認められている。

中東における主要パワーの対立構造の可視化

米国をロシアと中国と比較してみる; 米国は、国家のパワーの要素を考えれば最強国である。地域における最も影響力のある国であるが、多くのアラブ人が米国に移民しているにもかかわらず米国はアラブ諸国間で(民衆レベルで)最も受け入れられていない。

この点から見ると、3国の中でどの国が短期的観点でその意思を課すことができるか、あるいは、どの国が長期的観点で最もパワフルな影響力を持ちしかもアラブ地域の人々から受け入れられるかを判断するための情勢分析が必要だろう。

地域のライバル関係

地域のライバル関係はより複雑かつ興味深い。いくつかの理由があるが、地域のそれぞれの関心や目的が大変乖離していること、地域のカギを握る国々の国力がアンバランスなこと、地域の問題解決に財政が重要な役割をもっていることなどである。

イスラエルはイランと対抗するために米国との同盟を強めてきた。これは2013年のヘルズリア会議で最大に推し進められたが、イスラエルは地域における諸国の宗派的分類に言及した。イスラエルは、暫定的にこの分類により地域戦略を展開した。また、クルド人のイラン、イラク、シリア、トルコからの分離独立構想を支持した。最初の3か国はイスラエルにとって大きな脅威である。

イスラエルは、イスラエルが中東および北アフリカにおいて唯一の核保有国でありたいと考えて、イランの核保有への野望を抑えこもうとしてきた。イスラエルはまた、パレスチナの紛争解決よりも、地域の紛争解決に重要な役割を果たしたいと考えている。サウジアラビアがイランを揺るがそうとする戦略に同調する。ただ、アラブの人々は、サウジとイスラエルの協力の程度には限界があると見る。

地域大国のトルコは、NATOにおいて第2の軍事力を持ち、伝統的には西側とイスラエルに近い同盟国である。最近は、中東、北アフリカ、アフリカの角およびバルカン半島に影響力を広げたいと考え、徐々に地域の問題に関与してきた。これは、特に、欧州や地域での国際的合意のないまま東地中海におけるガス開発を強め始めてからのことである。

2016年の軍によるクーデターの失敗の後、エルドアンは将軍たちをシリアと東地中海への軍事介入にくぎ付けにした。しかし、エルドアンは、中東と北アフリカを確保するためリビア、スーダン、チャドまで手を伸ばそうとカタールとソマリアに軍事基地を完成させようとしている。

イランは、地域のいくつかの場所で挑発的、攻撃的な姿勢を見せている。そして、核兵器の生産を目論んでいる。イランは、湾岸諸国と海上で近い境界をもち、ホルムズ海峡を支配する地政学的な立地に恵まれている。軍事的に見ると、イランは、首長国連合、カタール、クウェートおよびバーレンと比較して国内の戦略的縦深性に恵まれている。その結果、これら3国はその海岸および領海を守るためイランとの協力を必要とする。イランとサウジアラビは、地域の紛争への関与を最大にするためそれぞれの意思を相手に押しつけようとする。少なくとも、両国間のバランスは取ろうとする。イランはイスラエルを主要な敵とみなし、同水準の兵器(核兵器)でバランスを取らなければならない。また、パキスタンとバランスを取る準備をしている。

イランはフーシとヘズボラを軍事的に利用し、地域における彼らの存在と影響を支援し、イランに対するイスラエルとサウジアラビアの連携に対抗してきた。また、イランは、戦争は首長国連合の繁栄に深刻な影響をもたらし、湾岸諸国の発展を妨げ、地域の安定を損なうことになると考えて、中国、インド、EUといった強い国と経済貿易面での関係を拡大してきた。

イスラエルとサウジアラビア王国は、中東の両サイドにある北のシリアとレバノンおよび南のイエメンを、イランが影響力を行使できる二つのブリッジと意識している。北のブリッジは地中海に、南のブリッジは紅海に通ずる。イランの敵であるサウジアラビアは、このイランの影響力拡大を弱めようとしてきた。もちろん、両国間の敵対はイスラエルの関心事であり、イスラエルがイランに対抗するため常に米国の支援を要請することとなった。そこで、イスラエルはこれまで隠されていたサウジアラビアとの関係を徐々に表に出し始めた。

サウジアラビア、首長国連合およびカタールは中東、北アフリカ、アフリカの角に大きな利害関係を持っている。イスラエルとサウジアラビはイランのイスラム法学者の失権をねらっている。何故なら、シリアとイエメンの宗派民族内戦、イラクとレバノンの新革命などは、影響力の大きい彼らの敵つまりイランにつながっていると考えているからである。

サウジアラビア・首長国連合とカタールの対立は、地域あるいは国際的な分裂を進展させている。イエメンに関しては、サウジと首長国連合には戦略の不一致がある。イランとともに世界で最大のガス田を持つカタールは、米国、欧州、イスラエルそしてトルコとの関係構築により、地域における政治安全保障の利益を大きく確保してきたことは疑いがない。さらに、ムスリム同胞団支配下のエジプトで計画された巨額の投資により大きな経済的利益を得るところだったが、最近は地域の敵対国、サウジアラビアと首長国連合にとって代われてしまった。

カタールは、中東と北アフリカ地域で影響力を行使し、湾岸諸国とエジプトに影響を与えた。カタールは、中東と北アフリカにおいて、エジプトがサウジアラビアと首長国連合に深い戦略的関係を持っていると考えている。そこで、カタールは数十年間にわたり、エジプトの支配体制を、サウジ・首長国連合を脅かすムスリム同胞団により組織された政府に入れ替えさせる努力をしていた。

リビアとパレスチナに特別な役割を持ち、またアフリカでその役割を拡大しようとしているエジプトは、より大きな地域的役割を果たせないいくつかの問題を抱えている。それらは以下のようなものである。

  • テロ、脆弱な政治体制(しっかりした政党の不在および真の政治的意思の欠如)といった国内の政治安全保障の問題
  • 国力に影響する最近の経済的状況

エジプトは中東において、他の地域パワーないしアクターから影響力のある国になることが望まれていない。特に、サウジアラビアおよび首長国連合と、イエメンに関する歴史的な対立があるし、首長国連合とイスラエルのシリアにおける目標がエジプトの政治的利益に合致していない。

湾岸協力会議(GCC)はライバリーを懸念

  • 彼らの地域課題の目標および利益と、脅威の源が一致しない
  • カタールの排除
  • イエメンの内戦はメンバー国間の意見の違いをもたらした
  • GCCが議論する解決案は仲介のみで特別なメカニズムがない
  • ガバナンスの集権化とカタール・オマーンの自立傾向
  • 主にサウジアラビアと、さらにカタールおよびバーレンとの間に国境問題が残っている
  • 政治安全保障問題よりも、経済統合の達成に優先順位
  • オマーンは、GCCがイランに対する地域戦争を目論んでいると見てGCCの軍事的団結に反対

地域的ライバリーの舞台

  • シリア: イラン、トルコおよびイスラエル
  • イエメン: サウジアラビア・湾岸諸国に対するイラン。カタールはイランを支持するだろう。
  • リビア: エジプト、首長国連合およびサウジアラビア対トルコおよびカタール
  • ガザ地区: カタール・トルコ・イラン対首長国連合・サウジアラビア。主としてエジプト、ヨルダン、イスラエル、パレスチナ政府およびハマスが、ガザ問題に責任あり

変化する安全保障ダイナミクス

  • NATOの一員で伝統的には西側の同盟国であるにもかかわらず、アンカラは、シリア内戦、イランとの関係、カタールの危機といった最も意見の分かれた地域課題について、自己の安全保障戦略を追求してきた。シリアでは、シリアの反政府組織を断固として支援してきたトルコは、米国の支援を受けたクルドグループ、YPG/YPが隣接する領土を獲得することを阻止するため、飛行禁止区域を管理した。そして、トルコはシリア北部で、米国の支援を受けているYPGを含むテロリストを排除するため行動を起こした。米国とロシアはシリアのクルドと緊密な関係を持っていたが、アンカラの安全保障の懸念には大人しく合わせてきた。それには、トルコ軍のシリア北部国境付近とイドリブへのプレゼンスを受けいれることも入る。他方で、トルコは米国とロシアとの二重の関係から得るものがあった。アンカラは、ロシアの対立的な外交戦略(アスタナ会議とソチ会議)で役割を果たし、ロシアと協力してエスカレーション回避とイドリブにおける非軍事区域の設定を実現した。
  • 東地中海では、エルドアンとリビア大統領アルサラジは、2019年11月安全保障軍事協力と海域確定の合意を発表した。これは、東地中海に関するアンカラの政策に利する中で、両国の国際法上の権利を守ることを目的としていた。
  • エジプト、サウジアラビアおよび首長国連合は、より広い動きを示した。サウジアラビアはフーシ(イランのプロクシ)を叩くためイエメンに軍事介入した。2014年、エジプトと首長国連合は二回、米国に通報も了解もなしでリビアのトリポリ周辺でテロリストを目標に秘密裏の空爆を実施したと言われている。
  • 2019年3月24日、エジプトーヨルダンーイラク首脳会議がカイロで開かれ、拡大経済安全保障関係が発表された。これは、1998年2月に発足した昔のアラブ協力会議(ACC)を思い起こさせた。それは、その8年前にできた湾岸協力会議(GCC)に対抗するようなものと見られた。エジプトに対する米国の兵器提供は停止されていたが、シシがプーチンと会談した後解除された。その間、イランやシリアのような米国の同盟国ではない国は、米国の制裁や貿易制限を中国やロシアを通じて、ときにはEU経由で迂回することができた。特にEUは、トランプ政権のJCPOA脱退にもかかわらず、ニフティバンクを通じてイランとの貿易を継続していた。
  • 他方で、米国のケースと同様、シリアにおけるロシアの同盟国はロシアが期待したようには常には動かなかった。モスコーは例えばヘズボラとイランの支援を受けたいわゆる補完軍を正規のシリア軍に登録しようとしたが、うまくいかなかった。また、モスコーは当初イランとヘズボラ軍をイスラエルに接するシリア南西方面に移動するよう話したが、それは一時的で終わった。シリアの内戦が終わろうとすると、イランに対するロシアの懸念と多くのイラン付属軍が前面に出てくる。
  • 首長国連合は、多方面での中国との協力の推進など独自の安全保障経済戦略を進めた。
  • エジプト、サウジアラビアおよび首長国連合はムスリム同胞団に対する懸念を共有するが、アサド政権とシリア反乱軍の性格については意見が異なる。イラクは、イラク内のイスラム国と一緒になって戦った米国とイラン双方に緊密な関係を持っていた。アラブのイスラエル関係は、少なくともパレスチナ人の苦境のため緊張したままだ。しかし、イスラエルといくつかのアラブ諸国は対イランで協力を深めている。

インパクト

新コロナウィルス(COVID-19)感染拡大の中東における強国間競争へのインパクト

コロナウィルスは中国武漢で発生して最終的に全世界に拡散し、世界保健機構がこれを世界的パンデミックと宣言した。したがって、中東も含まれる。中東はこのパンデミックに大きな影響を受ける地域である。

6か月以上続くこのパンデミックは、通常の力を発揮しないであろう強国間の対立を解決することはない。私はこれら強国が、経済停滞の進行と内向きへの傾向から中東のホットスポットから競争を取りさげると見る。それぞれの政府はウィルスに襲われた国への援助の提供を限定的ではあるが考えるであろう。極右の活動とテロ組織はそのような状況を利用するだろうし、彼らの目的に向い都合よく進むだろう。破綻政府もまた、この混乱に乗じて失敗を取り繕う機会を探ることとなろう。

米国

この状況の下、米国の経済停滞から国際的経済への最大の脅威が間違いなく生じる。米国がこの感染拡大をコントロールできるかよく分からない。トランプ大統領は、アメリカの意思決定において、組織的に行うやり方よりもトランプ個人の考えに依存するやり方を変えるべきである。結局、コロナ危機は大統領選挙のピーク時においてトランプを吹き飛ばす働きをしている。トランプ再選の成功につながっていた経済と米国および世界の株式市場の指標は低下するようだ。このように、コロナウィルスは、最低でも彼の在任中に失ったものを取り返せなければ、来る大統領選挙においてトランプの立場を損なうこととなろう。とにかく、中東の同盟国に対する米国の永続する支持は影響を受けるだろう。

中国

中国はこの危機への対応が成功したことを発表した。中国当局は短期間に注目すべき結果を出した。西側民主主義国は今なおそれぞれの国において、コントロールできずにパンデミックの拡散と戦っている。中国は経済が厳しい影響を受けているが、ウィルスの拡大を防ぐことに成功して、専制資本主義の一つの成功例を示した。中東の人々は、西側自由主義に比べ中国のアプローチを成功モデルと考えるようになった。

しかし、中国がウィルスへの対応について発表してきたものは、書かれたものの発表や単に中国政府の声明を公開するものだけだという見方がある。中国のウィルス感染拡大宣言の遅れが、大きな災害となる世界への感染拡大を引き起こしてしまった。

中国は、「我々は危機の封じ込めに成功し、今日中国は米国や欧州に比べてより安全である」と世界に訴えようとしている。西半球に住んでいる中国人や留学生は感染を恐れて、安全な母国に帰ろうとしている。中国人の西側からの帰国は中国のいくつかの県で新たなウィルスの蔓延を引き起こす可能性があることは間違いない。今度は中国政府は非難されることはない。非難は中国人が脱出した西側諸国に向けられるだろう。労働力は地方から主要都市に戻りつつあるが、これがウィルス感染の第二波を引き起こすかもしれない。

ロシア

ロシアにおけるパンデミックの拡大状況は、本当のところはっきりしていない。モスコーはこの危機に対して伝統的な対応をしているようだ。それらは、情報戦争であったり、問題から国民の目をそらすため機会を操作したり、敵の失敗を利用することである。プーチンはすでにこの機会をとらえて大統領任期を2036年まで延期してしまった。この動きの狙いは米国のシェールオイル産業に打撃を与えることであり、プーチンが世界経済を悪化させる能力があることを示すことである。またロシアは、旧大陸における困難を悪用して、欧州の分裂および欧米の分裂のため効果的な役割を果たすのではないかと思う。ロシアは、似たような役割を果たし、米中の対立を助長し米中関係を激発させよう。この二つの役割は、欧州や米国側の努力を歪め彼らのロシアに対する立ち位置を弱めるだろうが、他方で、ロシアに対する中国の支援と引き換えに中国のロシアに対するニーズを増加させる。ロシアはすでにイタリアに対して、EUの消極的対応が批判される中、COVID-19との戦いを助けるためロシア支援軍の派遣を始めた。

EU

老齢人口とコロナウィルスの侵入・拡散を抱えた欧州は、難民問題に加え極右と社会主義左派との対立といった欧州諸国間の分裂の増長に直面している。これは、いくつかのヨーロッパ諸国にある脆弱な体制の崩壊をもたらすかもしれないし、EUとその強力な行政組織の基礎を弱体化させるかもしれない。さらに、EU国間の国境の閉鎖および他国からの訪問者受け入れ拒否は、現在および短期の間不可欠なことである。これらの措置は、国々の孤立化を招きEU経済への深刻な影響および短い期間政治的・安全保障的な影響をもたらすだろう。

中東および東アジアへのインパクト
  • 中東諸国における社会の分裂と共同体主義の進行は、さらなる紛争、内戦、テロの拡散および国境を越えた犯罪をもたらす。これらは全て、不安定な安全保障・政治・経済環境を作り出す。影響力ある管理能力の欠如、力のある国の間の対立の増大およびイランに対する米国の政策は、中東にさらなる不安定をもたらす。これらは東アジアへの主なエネルギー資源に深刻な影響を与える。
  • 中東の経済・産業成長と石油需要の増加の関係は、中東のエネルギー資源の如何なる不足にも深刻な影響を受けるだろう。これは、特にイランに多くを依存している国など東アジアの石油ガス輸入国に影響を与える。
  • ロシアはイランを支持している。これにより、地域の国家に対するイランの伝統的な敵意ー現在または将来における外国軍隊のプレゼンスに対して脅しをかけるーにロシアが力を与えていることが明らかである。
  • イランに対する増大する経済制裁は、東アジアの石油ガス輸入国をしてより多くGCC諸国に依存させるようになるだろう。
  • ガルフ湾への軍艦の配置はイランを挑発することとなろう。イランはこの軍事的アプローチを敵対行為と考える。これはまた、この点で米国、中国および欧州に向かい合う日本と韓国のような国に、安全保障ダイナミックスの変化を作り出すことになるだろう。
  • カタールの分離は、東アジア諸国と湾岸関係に分裂をもたらす。
  • 中東から中央アジア、東南アジア特にアフガニスタン、フィリピン、インドネシアそしてマレーシアへのテロリストの自由な移動は、テロの東アジアへの広がりを助長する。

結語と展望

中東において

イランがもし核兵器を保有したら、地域の他の国、特にサウジアラビアもそれを持とうとするだろう。

イランに対する軍事行動は、特に国境が小さい国の陸上から行うことは、いよいよ難しいだろう。

イランへの経済制裁の増大は、イランの体制強化をもたらし、地域における戦術的な攻撃行動を増加させる。

国際的に

トランプ大統領は伝統的な同盟重視より米国の国内利益を優先するようだ。そこで、関心ある分野でキーとなる国との地域同盟がより多く見られるだろう。

ロシアと中国は米国の戦略的失敗により多くの同盟国を獲得しよう。ロシアの強力な宣伝機関と中国のソフトパワーが課題に大きな役割を果たしている。

インドは少なくともインド太平洋構想を通じて、中東においてその存在感が見込まれる。とにかく、この地域における最大の労働力はインド人である。

中東における将来の米中関係(対立、交代あるいは交渉?)

中東・北アフリカにおける米中協力は可能性がないようだ。しかし、二国間の関心事項についての話し合いあるいは戦略的対話は両国にとっても戦略的に必要だと考える。多くの基本的な相違と現在の対立にもかかわらず、双方とも以下のような重要な問題を考えるべきだ。

米国が一方的な意思決定のやり方を減らせば、中国もこれに応じて、優越思想を持つ帝国主義の国と緊密に取引することを受け入れるだろう。相互に関係しあっている彼らの経済が、コストのかかる対立よりもともに成長する道を提供するだろう。各々に一帯一路あるいはインド太平洋構想に招待することが提案されるだろう。

中国は特に中東・北アフリカにおいて一帯一路を成功させることに関心があるが、明らかなことは、この地域はキューケンホフ公園(オランダにある世界最大の花の公園:訳者註)ではなくて、地雷原が混在しているところなのである。結局、中国は内政不干渉の段階からもう少し積極的な段階に進んだ外交を展開することを考える。これは、潜在的紛争を防止する積極的なやり方で、地域の争いを鎮静化するものと考えられる。中東・北アフリカに対する中国の積極的な外交は、地域で進行している対立紛争を収めることが期待される。しかし、中国は米国やロシアとは異なる第3のパワーとして地域のトライアングルのバランスを完成させることができるであろうか。私の答えは、否である。それは短期では実現しないと考える。

(和訳 秋山昌廣)

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